不妊治療の終わりは一つのゴール

「不妊治療中は、まだスタートに立ってもいない」と言われた事があります。

果たしてそうなのでしょうか?確かに、妊娠、出産、育児という長い長い道のりから見ると、そうなのかも知れません。

でも、不妊治療をしている時点ですでにスタートには立っていると私は思います。だって子どもが欲しいと思っているんですから…

ですから、妊娠して始めてスタートラインに立つのではなく、妊娠して一つの終わりを迎えるんです。

不妊治療という様々な辛い思いをしてやっと授かった命…これまでたくさん頑張ってきた、たくさん悩んだ、体にも辛い思いをさせたし、パートナーにもたくさん助けて貰った、何より自分が一番頑張った…

この道のり、経験を何もなかったかの様に言う方は、思いやりがないなと思います。不妊治療を始めた時点で(子どもを望んだ時点で)スタートラインに立ち、めでたく妊娠し、或いは残念ながら諦めるとなった場合はゴールなんです。

いずれの形のゴールも、今までの不妊治療生活とは変わり、新しい生活が待っています。

ですので、「不妊治療は赤ちゃんを迎える準備期間」とよく理解し、子どもが出来ないから治療するのではく、子どもを作る為に治療するという考えで治療に臨んでいきたいですね。

養子を迎える事について

私は児童養護施設で働いていました。その中で、養子縁組もあったのですが、子どもがいないご夫婦が養子を迎えるのは、とても素晴らしいと感じていました。

40歳以上のご夫婦が殆どでしたが、皆さんが児童養護に理解があり、「子どもが欲しい」という熱い思いがあるんだなと感じたのを覚えています。

「自分の子どもではないけれど、始めは違う親かも知れないけれど、徐々に時間をかけて親子になっていきます」と仰っていました。

この様な愛の形もあるんだなと思いました。理由は分からないけれど、自分の子どもを望めなかった方が養子を迎えるという決断をされたのは、かなり悩んだ事だと思うし、一筋縄ではいかない事も多くあったと思います。

でも、少なくともそのご夫婦に救われる子どもはいるんです。施設も勿論安心と安全を守る場所ではあるけれど、たくさんの子どもが生活しているので、小学生はゲーム機を持ってはいけないとか、テレビを観る時間の制限とか、色々と我慢しなければならない事は出てきてしまいます。その点、家庭では一人一人にゆっくりと関わる事が出来るので、その様な制限はなくなります。子どもの生活空間も広がります。

不妊治療で残念ながら我が子を授かる事が出来なかった。それで子どもは諦める、これは一つの終着点かも知れません。

でも、夫婦だけの生活もいいけれど、子どものいる生活も諦められない…その様なご夫婦には、養子を考えるという選択肢もあります。

不妊治療を未来の子どもに伝える?

私はもし、不妊治療でめでたく授かり、その子が大きくなった時に、不妊治療の事を話そうと思っています。

勿論、話すのが必要になったらですが、隠す必要もないと思いますし、治療で授かろうが自然に授かろうが、同じ命だと思うからです。

結局は体外受精やもっと最新の技術で授かろうとも、その人の「妊娠する力」がやはり大切だと思います。

自分の子どもが大人になった時、不妊治療はもっともっと進歩しているでしょう。もっと広まっているでしょう。もしかしたら、私達の不妊治療に対しての認識とは、違う認識に変わっているかも知れません。

でも、自分は子どもが欲しくて、不妊治療をした。それを聞いた子どもが、悪い気が起こる訳はないと思います。

不妊治療をしてまで望んだ、あなたを授かった時本当に嬉しかったと伝わると思うからです。

前述しましたが、どんな方法で妊娠したとしても、結局はそのカップルの妊娠する力が大きいと思うのです。

来るべくして来てくれた命、その事に親も子どもも誇りに思って欲しいと感じます。

更に、不妊治療は決して特別な事ではないとも伝えたいです。

赤ちゃんが欲しいから不妊治療をした。これは、風邪をひいて熱が出てしんどいから病院に行くという事と何ら変わりないのです。

ですから、必要があれば話す事も大切だと思います。

不妊治療であってはならない事

数年前に、ある不妊治療病院の医師が信じられない発言をしました。

「もしかしたら精子を取り違えたかも知れません」

私は絶句しました。体外受精でめでたく授かった赤ちゃん。受精させる前に確認を怠った為、パートナーとは違う男性の精子を受精し移植した…絶対あってはならない事。

しかも、記者の質問に対しての、不妊治療専門医として考えられない言葉の数々…

被害者の心中を考えると、腸が煮えくり返る思いです。

人工受精や体外受精では、精子の確認は何人かで行っているんじゃなかったんですか?処置の前に、精子の確認と、女性の名前の確認をするんじゃないんですか?

そんな疑問を投げ掛けたくなりますよね。

海外でも人工受精において、信じられない事件を見ました(内容は割愛します)。

これから不妊治療が広まっていくにあたって、人工受精や体外受精を選択する方はもっと増えていくでしょう。

この問題は決して他人事ではないんです。自分が同じ被害に合わないとは限らない…危機感は必要だと思います。

未然に防ぐ方法は、やはり病院側の徹底した確認ですが、人工受精や体外受精をする前に、「この精子が旦那様のものですよ」と患者にも分かるように見せる方法があれば、被害は少なくなるのかなと思います。

どうかどうか、こんな間違いが二度とおこらない様に願います。

子どもだけは自分の思い通りにはいかない

「私は人生思い通りにやってきたけど、一つだけ思い通りにいかなかった事がある。それは子どもの事。子ども関係は絶対自分の思い通りにはならない」

これは、私の前の職場の先輩がおっしゃっていた言葉です。

私はこの言葉に非常に共感します。

まず、妊娠したいと思ってもすぐ出来ない…頑張っても頑張っても出来ない…思い通りにいきませんよね。

妊娠出来たら万々歳なんですが、また新たなスタートが始まります。

妊娠中は何かと制限が多く、女性にとっては結構大変です。初期は流産の心配やつわり、後期はお腹が大きくなってくる為、マイナートラブルが多くなります。

私も、妊娠9か月の頃に重度の膀胱炎になり、二週間の入院を余儀なくされました。鉄分不足になるし、むくむし、大変です。

出産したら子育てが始まります。これも一筋縄ではいかない。問題がクリアすればまた新たな問題が出てきます。

確かに自分の思い通りにはいかない事だらけです。

不妊治療の先には、妊娠、出産、育児という道が広がっています。

ある意味、自分の事は後回しです。子どもを育てる、育て上げるという事は本当に大変です。不妊治療中は、どうしても妊娠する事を一番に考えますが、今しか出来ない事、妊娠したら出来なくなる事を優先的にしてみてもいいかなと思います。

パートナーを尊重する気持ち

不妊治療をして変わった事はまだあります。

変わったというか気づく事が出来たと言うか…

それは主人を思いやる気持ちです。

今まで私は、あまり主人の事を思いやっていなかったのかも知れません。というのも、結婚してすぐ妊娠して出産、育児…何だか怒涛の様に過ぎて行ったのです。ずっと自分自分ばかりで、主人の事は二の次でした。育児があまりにもしんどくて「もっと手伝ってよ!」と怒った事もあります。主人は手伝ってくれていたのに…

でも、二人目が中々出来なく、不妊治療を始めてからは、主人に対する考えが変わりました。

最初、主人は治療には反対だったのです。でも、私が毎月リセットしては落ち込んだり、通院をしている姿を見てくれて、徐々に理解を示してくれる様になりました。
でも何回か喧嘩もしました。精液検査をする時は「そんなの必要ない」と言われ喧嘩になり、人工受精にステップアップすると言った時は「自然じゃないみたいで嫌」と言われ喧嘩…

今まで喧嘩なんてした事なかったのですが、ぶつかる事でこんな一面もあったんだと分かりました。

不妊治療は夫婦のずれがあったら、中々難しいと思います。でも、男性は、女性の体の事や気持ちは、伝えないと永遠に分からないんです。

不妊治療を通して、夫婦で冷静に話す事、主人の新しい一面を知る事が出来たと思っています。

不妊治療は健康に関して敏感になる!?

不妊治療をして、何か変わった事はありますか?

私はまず、自分の体に敏感になりました。

若い時は体なんて二の次、バイトや遊び、学生生活の満喫と、楽しい事がたくさんありました。

就職してからも、体の事よりも仕事が忙しくてずっと働いていました。

生理なんて前にいつ来たかも分からないくらい、基礎体温の存在も知らないし、そもそも周期の数え方すら知りませんでした。

まぁ、毎月きちんと生理が来ていたから気にならなかったのもありますが。今考えると、贅沢ですよね。

そんなテキトー人間だった私が、不妊治療を始めてからというもの、自分の体に敏感になってきたのです。

最初は、生理前の体の調子だけだったのですが、妊娠には冷えが良くないという情報から、冷えに気をつける様になりました。

それに食べ物にとても気をつける様になったのです。以前はインスタント食品やコンビニ弁当が多かったんですが(笑)

後は睡眠。夜更かしさんだったのに、最近は0時までには寝る様に心がけています。

これって、不妊だけでなく、健康にとっても良い事ですよね。

食事や睡眠は言うまでもなく、体の変化に敏感になるという事は、体の不調にいち早く気付く事が出来る様になると思います。

不妊治療の先には、健康でいる為に大切な心がけがたくさんあるんです。

不妊治療はどんどん色に染まっていく!?

不妊治療って、結果が白黒分かれるものだと思いませんか?白は妊娠した時、黒はリセットした時。私はずっとその様な認識でした。

しかし、ある人が言った言葉で考えがガラッと変わりました。

「不妊治療は最初は真っ白な状態。でも妊娠しようと考え始めた時から、脳が妊娠モードになり、それが体に伝わって真っ白だったものにどんどん色がついていって、最後には幸せな赤い色になる」

何故赤い色なのかは聞き忘れてしまいましたが、私はその方の考え方に救われました。

不妊治療中は、少なからず頑張っている訳で…そんな中、中々結果が出ないとやっぱり落ち込んでしまいます。

でも、不妊治療は結果が全てではないと気付く事が出来ました。

今頑張っている事に価値があるんですよね。リセットしたら辛いけど、それもまた学び。

それも考え方次第では、リセットは「新たなスタート」とも取れるんですよ。

リセットするという事は、体の循環がきちんとなされている事。排卵もきちんとあるという事。

ついつい、「今回もダメだった」と落ち込みがちになってしまいますが、こういう時こそ視野を広げて、おおらかに受け止めたいですよね。

偉そうに言ってますが、そんな気持ちになれるかどうかは全然自信ありません(笑)でも、落ち込む暇があったら次に向けて頑張ろうと、考えを変えていこうと思います☆

後の自分に後悔のない選択を

不妊治療を止める決断をされた方が私のお友達にいらっしゃいます。

まだ40歳なんですが、二人目不妊で頑張って治療していました。

ある時に「もう止めよう」とふっと思ったそうです。

体外受精を2回されたのですが、残念ながら流産してしまい、その後は自分達のタイミングで頑張っていました。

「もう疲れちゃった。でもやりきった感はあるから後悔はない。」と言っていました。

私はまだまだ諦める事は出来ないですけど、もし諦めるとなった時に、彼女みたいに後悔してないときっぱり言い切れるのかなと痛感しました。

やっぱり今自分が出来る事を精一杯やるしかないですよね。

私は今は治療をお休みしていますが、もし再開するとなれば、体外受精を選択するかも知れません…でも、主人は体外受精に反対です。

でも、体外受精をやらずに後悔するよりは、やって後悔した方が全然ましだなと思ったので、時期が来たら主人に切り出すつもりでいます。

不妊治療は先が見えませんよね。よく「出口のないトンネルの中にいるみたい」と揶揄されますが、その気持ち…よく分かります。

でも10年後の自分に対して後悔のない選択をしたいですよね。その為には、今の治療なり休む事なりを一生懸命やるしかないと思います!

妊娠しても周りへの気遣いを忘れないで…

不妊治療の先にあるものって何なんでしょう?

勿論、最終目標は妊娠する事であるし妊娠したら終わりなんですが…何だかそれだけではない様な気がします。

不妊治療の末に妊娠された方から私はこんな事を言われた事があります。「妊娠しても不妊治療していた事は忘れられない、忘れたらいけないと思う。だって〇〇(←私)も含めて不妊治療を頑張っている人はいっぱいいるもんね。」

彼女が何を言いたかったのかというと、妊娠したら割と不妊治療時代の事は忘れてしまう方がいるんだそうです。治療中の心づもりを忘れるというんでしょうか。

治療中は、同じく不妊治療中の方に対して言動には気を使いますよね。ちょっとした事が傷つく原因になってしまう事を、自分もよく知っているからです。

しかし、めでたく妊娠した途端、嬉しさのあまりその気遣いを忘れてしまうのです。頭の中はもう妊娠した事でいっぱい。

気持ちは分かります。

でも、もしかしたら自分の周りにこの瞬間も不妊に苦しんでいる方がいらっしゃるかも知れない。リセットしたばかりで落ち込んでいるかも知れない。もしかしたら化学的流産になってしまったかも知れない。

自分の周りに赤ちゃん待ちの方がいたら、もし自分が妊娠した場合、それなりに気を遣わなくてはいけないなと思います。